新着ニース・ブログ:経営者と人事責任者の皆さんへ    

カスタマーハラスメントと正当なクレーム

2024年3月:カスタマーハラスメントと正当なクレーム 

今月のテーマは『カスタマーハラスメントと正当なクレーム』です。会社が成長し続けるために顧客満足度向上は不可欠であり正当なクレームには適切な対処が必要です。一方、最近は顧客によるカスタマーハラスメントにて従業員が疲弊することも顕在化、クレーム対応には雇用管理上の注意も必要です。おもてなし文化の日本、外国観光客からは好印象のようですが、日本の顧客の求めるサービスは諸外国に比べ過剰でカスタマーハラスメント発生要因の一つになっているかも知れません。「正当なクレーム」との違いは何か? 厚労省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」にて判断基準を2つ(要求内容の妥当性と要求実現への手段・態様)挙げています。図はこの2軸をマトリックスに置き換えたものです。2つ(要求内容の妥当性と要求実現への手段・態様)が揃っているものが“正当なクレーム”、顧客との建設的な合意を目指すもの。それ以外は可能な範囲内にて対話努力はするものの、目指すゴールは必ずしも顧客との合意ではありません。要求内容・主張の妥当性はあっても要求実現への手段・態様が不適切(恐喝的、威圧的等)であれば、要求内容に論点を置かず手段・態様の問題改善への対話、目指すゴールは引き分けでも良いのではないでしょうか。また要求実現の手段・態様が適当(適切な言動等)であっても要求内容の妥当性が無ければ応じることはせず、打ち切りをゴールにした対応も考えられます。2軸とも不適切であれば法的措置も検討するなど、会社の姿勢を明確にすることで従業員を守ることにつながります。厚労省は①方針・姿勢の明確化と周知・啓発②従業員への相談対応体制の整備③対応方法・手順策定④従業員への教員・研修⑤事実関係の正確な確認と事案への対応⑥従業員への配慮⑦再発防止策などを会社の取組みに挙げています。これらの取組みをベースに会社独自の対策も組合わせ従業員を守り、信頼関係・定着・生産性向上につなげ、安心して働ける会社、ウェルビーイング経営を目指して下さい。

労働条件明示ルールの変更

2024年2月: 法改正(2024年4月1日)労働条件の明示ルール 

今月のテーマは『法改正・労働条件の明示』です。契約は口頭でも成立しますが、労働基準法では使用者に労働契約の締結に際して、全ての労働者に対し書面(電子可)による労働条件の明示が定められています。明示する労働条件は、法律上必須の明示事項(絶対的明示事項)と会社が定めた場合に明示する事項(相対的明示事項)があります。4月からは絶対的明示事項に4項目が追加され明示のタイミングも示されました。1項は「就業場所・業務の変更の範囲」。現行は「雇い入れ直後の就業場所と業務内容」で足りていましたが、改正後は契約期間内に人事異動などを想定した変更の範囲も明示が必要です。2項は「更新上限の有無と内容」。有期労働契約の場合は、更新上限(通算期間または更新回数)の有無と内容が追加されます。また契約時に想定されていた更新内容から変更する場合は、事前に対象者に理由の説明も必要となります。3と4項は無期転換に関する事項。まずは「無期転換申込機会」の明示。有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期労働者に無期転換権が発生し申込みにより期間の定めのない労働契約へ転換されるルールがあります。これは労働者の権利なので会社の承認は不要で会社は断ることも出来ません。4月以降は無期転換権が発生する契約更新時に、権利発生と申込機会の明示の必要があります。次に「無期転換後の労働条件」の明示。無期転換とは契約期間を有期から定めのない無期に換えることで、その他の労働条件(賃金等)まで正社員と同じにする制度ではありません。従って無期転換後の労働条件がどう変化するのか? 明示も必要となります。なお、フルタイム無期転換の場合はパート有期法(同一労働同一賃金)の法の保護(対象者)からは外れますが、正社員等とバランスを考慮した事項などの説明は実施した方が良いと思います。労働契約の更新を事務的に行っていた会社があったのではないでしょうか? この法改正を機に契約締結や更新を労働者との対話の機会と位置付け、経営者の思いを伝える場として活用、対話による相互理解にて従業員が安心して働ける会社創りを目指して頂ければと思います。

時間外労働の上限規制 猶予期間終了

2024年1月: 過剰な成果の整理整頓 

明けましておめでとう御座います。2024年がスタート致しました。昨年は世界では大規模な紛争、国内では継続的な物価高など不安定な年でもありました。反面、WCにて日本が優勝、MLBにて大谷選手のMVP獲得など明るいニュースもありました。さて、今年はどんな年になるのでしょうか? 労働法関係では、自動車運転手、医師、建設の事業にて猶予されていた時間外労働の上限が適用される年(20244月)、いわゆる2024年問題と言われている年です。この問題解決を業界だけに任せるのではなく、サービスを受けるユーザー側も一緒に考えて欲しいと思います。おもてなしの文化を持つ日本、おもてなしは諸外国から好印象のようです。反面、人手不足の業界にて過剰なサービスを求めていないか? 即日配達をやめ余裕ある納入日を指定するなど、少しの気遣いの積み重ねが問題解決の一助になるかも知れません。そして、この少しの気遣いを仕事にて水平展開出来れば、生産性向上、時間外労働削減、働きやすい職場環境につながると思いませんか? 働きやすい職場環境は人財の定着にもつながります。仕事にて過剰な成果を求めていないか?是非、必要な成果の整理整頓を行ってみて下さい。成果の整理とは、必要なレベルの成果と過剰な成果を区別し過剰な部分はレベルを落とせないか?担当者と対話すること。整頓とは必要な成果を出せた行動を、多くの人が再現できるようにプロセスをマニュアル化、エピソードの文章化などでいつでも取り出せるようにすること。その狙いは、誰が行動しても限りなく再現性のある成果にして行くことにあります。この積み重ねが人財育成の投資、無形資産を有形資産(人財育成の成果の見える化)にでき、教育の必要性を実感、更なる人財育成へと好循環のサイクルになります。限られた時間での成果を効果的に発揮する必要性のある時代、対話による相互理解にて過剰なサービスを見直ししてみては如何でしょうか?経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。本年も対話をキーワードに安心して働ける職場創りの年にして頂ければ幸いです。

長期有給休暇取得と時季変更権

2023年12月: 長期有給休暇取得と時季変更権 

今月のテーマは『長期有給休暇取得と時季変更権』です。ある会社から外国人労働者が35日の連続有給休暇を申請してきた、対応方法は無いか?の問い合わせがありました。労基法上、有給休暇は法律として当然に付与される権利で、原則労働者には自由に有給休暇を使用することが出来ます。一方、会社は労働者から指定された時季に年休を与えることが『事業の正常な運営を妨げる場合』には、その時季を変更できる権利もあります。一般的には、繁忙期や休んでいる人が多く人員配置の面で問題が生じる場合などが考えられますが、35日もの長い間を休むのは、客観的に見ると『事業の正常な運営を妨げる場合』に該当する可能性はあると思われます。「事業の正常な運営を妨げる場合」の判断を、ある判例では、その事業場を基準として、事業規模、内容、労働者の担当業務、作業の繁閑、代行者の配置の難易などを考慮して、客観的に判断されるべきとしています。逆に言えば、それに該当すれば、時季変更権を行使できることになります。図は年休の時季指定と時季変更のイメージです。なお、ある判例での時季変更権の趣旨は、「使用者に対し、できる限り労働者が指定した時季に休暇を取得することができるように、状況に応じた配慮を要請している」とされています。その意味から考えると、外国人労働者が一時帰国で有給休暇の連続使用がある前提で、ゴールは40日とっても問題ない体制づくりのように思います。「事前の調整」を経ない「長期かつ連続」の年休申請は、時季変更権のハードルが一定程度下げられますが、各労働者と調整の上、年休の取得日を確定していく仕組みに変わりはありません。暫定的には35日間も有給休暇を貯めてしまうような有給管理体制の見直しも必要です。基本は法律論ではなく社内風土の醸成です。従業員の関係性改善から相手を思う思考の改善へ。思考の改善が実際の行動の改善につながり良い結果につながります。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。有給休暇の気持ち良い使い方には日常の“対話”が重要です。対話は労使の信頼関係を構築します。企業価値向上につながる解決に取り組んでください。

労使協定一覧

2023年11月: 労使協定書と労働契約書 

今月のテーマは『労使協定書と労働契約書』です。ご存じかと思いますが、労働基準法では労働条件の最低基準が定められており、労働契約は労働基準法を下回らない内容にて締結することになります。この労働契約は個別の労働契約書や就業規則などで定められるのが一般的です。では、労使協定書(使用者と労働組合または過半数代表者との間で締結した書面)はどのような位置づけとなるのか?どのような意味を持っているのか?をご理解していますでしょうか? 実は労使協定は、労使が合意(書面による締結、および一部届出要件あり)すれば労働基準法の適用を免除するもの、労働基準法の例外を認めるものとなります。つまり、原則的な労働基準法に違反しても罰則は適用しないことを意味し、免罰効果の効力があります。注意点は、労使協定書は原則そのままでは労働契約書の効力を持っていないとことです。例えば、時間外労働・休日労働の協定書を締結、届出したとしても、労働者との間で時間外労働や休日労働の契約合意(就業規則や個別労働契約書などの定め)をしていなければ、契約上は時間外労働・休日労働を命じることが出来ないことになります。労働基準法には、協定を締結すれば“出来る”と記載がありますが、この“出来る”は法律に抵触しないことを意味しており、労働者との契約合意は別の問題となります。実態として運用するためには、労使協定書+労働契約書(就業規則等)のセットになります。労務トラブル予防の観点からも、労使協定の内容が労働契約(就業規則等)に落とし込まれているのか?または従業員の合意が取れているか?を一度ご確認して見て下さい。なお、労使協定書には時間外労働・休日労働の協定書のように有効期間の定められたものがあります。有効期間が切れたときには更新が必要です。そういう意味では、“労使協定書”は経営者と従業員の信頼関係を築く定期的な“対話ツール”とも言えます。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。労働環境や労働条件の“対話”は労使の信頼関係を構築します。労使協定が企業価値向上にもつながるように取り組んでください。

採用選考時に配慮すべき事項

2023年10月: 採用の自由とプライバシーの侵害 

今月のテーマは『採用の自由とプライバシーの侵害』です。少子高齢化の進展に伴い労働力人口の減少と人材のミスマッチにより、年々深刻化している人手不足問題。51.4%の企業が人手不足と感じている調査結果もあります。それに追い打ちをかけるのが離職率の増加。今、企業は人材のミスマッチ解消と離職率低下に向けた採用活動を求められています。ここで問題となるのが採用選考の方法です。図は厚労省が就職差別につながる恐れがある14項目を示したものです。自社の採用選考の方法に問題が無いか?一度チェックして見ては如何でしょうか? 企業には採用の自由があり、使用者は法律その他による特段の制限が無い限り、原則として、いかなる者を何人採用するかについて、自由に決定し得るとの立場(三菱樹脂事件の最高裁)をとっています。この判決のポイントは、“法律その他による特段の制限が無い限り”です。障害者雇用促進法では障害者雇用率、雇用機会均等法では差別の禁止、高年齢者雇用安定法では60歳以上の継続雇用など。その他にもプライバシー侵害、業界に適用される法律、厚労省ガイドラインなど多数制限が存在します。就職差別14項目でも、合理的・客観性に必要性が認められない採用選考の健康診断がNG項目としてあげられています。これを類推適用すれば、合理的・客観性に必要性が無いにも関わらず、うつ病歴や精神疾患などのプライバシー侵害に抵触する恐れのある調査項目を選考時に実施することは慎重な判断が必要と思います。実施する場合には客観的に合理的な説明や対話など、本人同意は必須ではないでしょうか。情報化社会において、会社の採用選考の方法、面接、面接官との対話などその姿勢は応募者以外の人にも伝わります。“採用選考”は経営者の思いを多くの方に伝えるチャンスとも言えます。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。採用という入口から労使の信頼関係を構築出来れば定着率も向上します。採用選考が企業価値向上につながるように取り組んでください。

人事権の行使と労務トラブル

2023年9月: 人事権行使と労務トラブル 

今月のテーマは『人事権行使と労務トラブル』です。一般的に4月と10月は人事異動の多い時期で、人事権行使にて労務トラブルになるケースも増えます。その多くは人事異動の有効性です。図は良くある労務トラブルの争点をストーリー化したものです。単純に人事異動を言い渡すと労働者からはクレーム的な主張をされることがあります。『異動があるとは思っていなかった・そんな約束をしていない・聞いていない』など。会社の上司は異動の主旨、目的や就業規則の定めなどからその説明を行います。ここまではよくある場面です。しかし、ネット社会における労働者は、事前に得た情報や知識も持っており、更に主張します。『勤務地、職種限定の合意・法律違反、一方的な不利益変更による権利の濫用』など。人事異動は労基法には直接的な規制が無く、他の労働法にて間接的にあてはめ合理性の判断が必要となる案件です。例えば、均等待遇の原則と差別的取扱いの禁⽌(労基法3条)、 報復的不利益取扱い(労基法104条、個別労働関係紛争解決促進法4条3項、公益通報者保護法51項)、性別等を理由とする差別的取り扱い(均等法6条)、妊娠・出産等や⺟性保護措置等の申出等を理由とする不利益取扱い(均等法9条3項)、育児介護休業法の不利益取扱い(育介法10条)、公序良俗(⺠法90条)、権利濫⽤(労契法3条5項、⺠法1条3項)など多数存在します。一つ一つ確認することは難しいと思いますが、法違反は別として、異動契約が異なっていれば新たな契約にて合意を目指し、権利の濫用ではないことも説明します。ここが労務トラブルに発展するか否かの分かれ道です。労働契約法第3条労働契約の原則では『労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し又は変更すべきものとする』と示されています。トラブル防止やモチベーションアップも視野に、会社は一方的な通知のみではなく、丁寧な説明と客観的に合理的な説明など、“対話”を出来るようにしたいものです。その姿勢は当事者以外の従業員にも伝わります。そして“対話”は経営者の思いを発揮できるチャンスとも言えます。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社です。労使の信頼関係を更に深化させた会社風土の醸成へ取り組んでください。

治療と仕事の両立支援の進め方

2023年8月: 生活と仕事の両立支援② 

今月のテーマは前月に引き続き『生活と仕事の両立支援』です。生活の中で育児と介護については法(育児介護休業法など)による両立支援が整備されつつありますが、病気を治療しながら働き続ける両立支援につては現段階では企業の裁量によるところが大きいのではないでしょうか。医療の進歩(働けるか否かのボーダーラインの変化)と高齢化の進展(定年後の継続雇用)等の労働環境に大きな変化がある中、治療と仕事の両立支援への対応が持続的な経営には必須の時代となってきます。前回は両立支援の環境整備(体制・制度・組織文化の構築)について説明させて頂きましたが、実務では進め方がポイントとなります。実務のステップは図を参考として下さい。その中で重要なことは従業員からの申出(主治医へ業務内容等を情報提供し配慮事項等、医療視点での意見の聞き取り)と、従業員が自ら決めつけて継続勤務を諦めさせないこと。まずは仕事を継続する上での具体的な困難事項を整理、聞き出すことです。何が出来て何が出来ないか?その中から解決へ向けて何が出来るか?どこまで配慮出来るか?を真剣に話し合うことです。もちろん会社は従業員の希望すべてを受け入れ出来るわけではありません。その結果、就労不可の結論に至るケースもあります。しかし、そこに至るプロセスを大切にして欲しいと思います。本人も会社もやり切った、話し合えたと思えることが、両立支援であると捉えてはどうでしょうか? その姿勢は当事者以外の従業員も感じ取れると思います。経営者の思いを発揮できる会社創りのチャンスとも言えます。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。この基本を忘れず両立支援を深化させた会社風土の醸成へ取り組んでください。

生活と仕事の両立支援①

2023年7月: 生活と仕事の両立支援① 

今月のテーマは『生活と仕事の両立支援』です。まず、労使の原則的な労働契約を確認すると、会社は労務の提供を受ける権利がある一方で対価としての報酬を支払う義務が発生します。労働者の視点からいうと働く義務と報酬を受け取る権利になります。この権利義務関係が崩れると労働契約も成立しないことになりますね。しかし、長期間にわたる労働契約では労働者のライフイベントも労働契約中に一緒に過ごす性質から一時的に労務提供に支障が来す共通案件が生じます。 その代表例が病気(本人と家族)、育児、介護です。今、この案件への両立支援が企業に必要な経営施策の時代になってきました。背景は医療の進歩(働けるか否かのボーダーラインの変化)、労働力人口減少(人財確保)、高齢化の進展(定年後の継続雇用)、働き手の多様化(女性活躍など)等、環境の大きな変化があります。その変化に対応出来ないと有能な人財の獲得が出来ず、または人財の離職・流失など人財ショートによる経営危機を招くことが想定されます。昨今の育児介護休業法の法改正もこの一環です。病気(本人と家族)、育児、介護の問題で従業員が働き続けることを諦めてしまうことのないように、働きを後押しする制度と体制整備を真剣に考えましょう。ポイントは2つ。1つ目は育児介護休業法等の法対応にとどまらす病気休暇制度など独自の制度や相談体制などハード面の構築。2つ目は制度を利用する方へ配慮出来る組織風土などソフト面の醸成です。さらに一歩進めれば、配慮する組織の方々を支援する会社の施策です。支援する人を評価する仕組みや配慮する組織を全社でカバーする仕組みなど、現場任せにしない一体感を醸成する施策の導入です。配慮を後押しする間接的な支援が両立支援具現化へのカギです。経営者の思いを発揮できる会社創りのチャンスでもあります。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。この基本を忘れず生活と仕事の両立支援を具現化出来る職場環境の構築へ是非取り組んでください。

コミュニケーションの目的

2023年6月: コミュニケーションの目的 

今月のテーマは『コミュニケーションの目的』です。新年度に入り企業様より研修のご依頼を受ける機会が多くなっています。新入社員、新人受入職場、組織開発の研修など受講対象者や目的、各企業の問題も様々ですが、共通した課題(問題解決にてやるべきこと)の一つにコミュニケーションの改善があげられます。問題によりレベル感は異なりますが、多くの企業で出てくる改善策は、コミュニケーションの場の提供、確保など習慣を復活させることが提案されます。しかしコロナ禍で従業員の意識も変化、また感情面にも配慮すると以前の行事的な飲み会や親睦会等よるコミュニケーションは価値観の多様化と相まって難しくなっています。コミュニケーションは時間の長さから回数、質へと変化させる施策がより重要になって来ました。回数増や質を上げる施策は、日常の挨拶、会話やその時の表情を大切にするところから始めると良いかと思います。それを定着することでコミュニケーションしやすい風土が醸成されます。そのコミュニケーションで意識してもらいたいことはゴールです。様々な利害関係のある職場では役割や立場などのバイアスによりゴールを見失います。ゴールの重要な要素は相手に役立つ事を伝えることです。しかし、受け身タイプの方は、相手に嫌われたくない事が無意識の目標にあり自分を犠牲にしてしまいます。また攻撃的なタイプの方は、相手との論争に勝つ事が目標となる傾向にあります。結果どちらのタイプもゴールにたどり着けません。そこで自分も相手も大切にする気持ちの良いコミュニケーション(アサーティブコミュニケーション)のスキル習得と訓練、自己表現力を高めることが効果的であり、対話力を高める企業研修に取り入れています。このスキル取得は従業員の生活の中で出会う様々な出来事にも対応でき、労使ともにwinwinの研修となる分かりやすさもメリットにあります。コミュニケーション課題に取り組む企業様は取り入れを検討してみては如何でしょうか。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。この基本を忘れずコミュニケーションの目的を果たせる職場環境改善へ取り組んでください。

ステップ別視点による復職判断

2023年5月: メンタル休職の復職判断(ステップ別の視点)

今月のテーマは『メンタル休職の復職判断』です。多くの会社は従業員が私傷病で労務に着けない場合、解雇せずに一定期間の労務を免除、雇用を維持し、解雇トラブル回避の休職制度を設けているかと思います。従業員も職場復帰の機会が与えられ労使共にメリットのある制度です。しかし、労働基準法には休職に関する定めは無く、その内容は会社と従業員の労働契約に委ねられます。就業規則等にて契約内容を定め、会社ごとに判断し運用します。一般的に休職期間は有期限、期限が迫ると復職可否を判断することになりますが、怪我等とは異なり目に見えない病のメンタル休職者の復帰判断は、実務では難しい問題となります。ある調査にて、医師は診断書の復職基準を日常生活上で支障の無い状態で足りるとの回答が96%でした。医師の診断書は必須ですが、会社は仕事をする場所の前提で考えると、この内容では不十分です。会社には労働契約に付随して安全配慮義務が課されおり、安全に働かせることが出来るかが復帰判断の重要な要素になります。ではどの様な視点で判断すれば良いのか?私は企業の安全配慮義務の観点から3つのステップにて復職の判断視点を提案しています。ステップ1は日常生活レベルでベースとなる視点です。生活のリズム・症状の安定・睡眠・体力・意欲などが整っているかを確認します。ステップ2は業務遂行レベル。会社は仕事をする場所であることを前提に、業務遂行上の集中力・判断力・思考力・持続性などを確認します。ステップ3は再発防止の視点となります。メンタル不調者は再発率が高く、安全配慮義務履行の視点からは予防の取り組みも必要です。復職後も治療計画の遂行、業務負荷、相談体制など職場環境の整備と再発防止への本人意識がポイントとなります。この3つの視点で、本人の主観的判断と人事担当などの客観的判断をすり合わせ、どこにギャップがあるのかを明確にし対策することで、安全な復職可否判断が出来ると思います。経営の基盤は従業員が安心して働ける会社創りです。この基本を忘れず復職判断にも取り組んでください。

組み合わせる力と意味づける力

2023年4月: 組み合わせる力(ミスマッチの解消へ) 

今月のテーマは『組み合わせる力』です。新年度がスタート致しました。学校を卒業した新たな社会人を迎入れる会社も多数あるかと思います。また、新入社員は学生時代に学んだこと、やりたいと思っていたことを実現する夢と希望を持ってこの4月を迎えていることでしょう。一方、近年の傾向は3年で約3割の新卒者が退職しているようです。様々な理由があるかと思いますが、良く聞く理由の一つは「ミスマッチ」、やりたいことと実際の仕事が違う。学生時代に身に着けた能力を生かせる仕事では無い。中小企業の人事はこの答えに苦慮します。うちの会社にはあなたが求めるスキルにマッチする仕事はありません、と突き放すような会話では離職の確立が高まります。職種が少なく異動の範囲が限られている中小企業では対応が難しいのは事実です。私は新入社員研修にてこのテーマを自ら考えてもらう演習を行います。図表の上段が演習例、キーワードをいくつか選定、キーワードを網羅した文章を作成してもらいます。ステップ2では単なる文章から明確な目的を定めた文章を作成します。この違いの気づきは、目的を定めた文章は「励まし」など、意味のある価値提供の文章になっていること。下段はこれを日常の仕事に置き換え考えます。キーワードを自身の持っている能力に置き換え、これを組み合わせて自身の仕事を完成させる。そしてその仕事に意味を見つけ出し、どの様な価値を提供できるか?を考えてもらいます。与えられた仕事でも自身の持っている様々な能力(保有能力)をその場面によって組み合わせ、最高のパフォーマンスを発揮する方法(組み合わせる力)と他の者へどのようなプラスの働きかけになるかなど、考える力(意味付け出来る力)を養うことが目的です。この「組み合わせる力と意味づける力」は、ポータブルスキルとしてどの会社でも役立つスキルです。これを一緒に考えフォロー出来ると成長実感できる会社となり、定着性向上にもつながるかと思います。取り組んで見てはいかがでしょうか。

成功の循環モデル ダニエル・キム

2023年3月:  個の力とつながる力:人材開発と組織開発

今月のテーマは、『個の力とつながる力』について説明致します。昨年12月にサッカーワールドカップでの日本の活躍は印象に残る出来事でした。また今月はワールドベースボールクラシック(WBC)も行われています。日本サッカー森保監督は、マスコミのインタビューにてドーハの歓喜を"個の力""つながる力"で表現されていました。ドーハの歓喜は何処からやってきたのか?ドイツ戦、スペイン戦共に前半1点リードされるが、後半にメンバーを入れ替え逆転勝ち。森保監督は、このドーハの歓喜を成し遂げたその要因を次の様な主旨にてお話しされました。“全てのメンバーにて試合がつながった。個々の力は大切であるが、ベンチにいるメンバー含めて試合をつなげたことが勝因だった”と、このドーハの歓喜を“個の力”と“つながる力”の言葉にて表現していました。ダニエルキム氏は、『成功循環モデル』と題して『組織としての結果の質を高めるためには、まず「関係性の質」を高めるべきである』、第一に行うのが負の結果の改善ではなく、関係性の改善であると説いています。森保監督はコスタリカ戦に負けても敗因の改善をスタートにせず、もう一度つなげることを第一に考え、その采配があのスペイン戦でした。つながること(関係性の改善)を第一の改善にした采配は、成功の循環モデルの法則を実証した試合となりました。“個の力”と“つながる力”を人事の視点で言えば、能力開発と組織開発になります。この両輪がバランスよく出来ると、計り知れない力が個人と組織にて発揮されます。発揮能力の最大化には、個の能力とそれをつなげる個と個の関係性の力が必要と言えるのではないでしょうか。WBCでは、史上最強メンバーをそろえた日本と言われていますが、つながる力を発揮できるかが活躍のカギとなりそうです。各社が目指す人材育成/能力発揮は、個々の能力と個をつなぐ力(つなげる力)が相まって最大化されます。関係性を大切に、従業員が安心できる会社創りを目指してください。

インターバル制度

2023年2月:  時間外労働削減への取組:インターバル制度

今月のテーマ『時間外労働削減への取組:インターバル制度』について説明致します。前回は、202341日から中小企業が猶予中の月60時間超の時間外労働の割増賃金率を50%以上とする法の適用と残業削減・生産性向上が重要な年になることを説明させて頂きました。経営者・人事責任者の皆さんは既に何らかの残業削減の施策は導入している反面、成果が上がらない悩みもお持ちになっているかと思います。早稲田大学のある分析結果では、残業削減の様々な施策には労働時間におけるプラスとマイナスの効果が共に存在すると言われています。詳細は省略しますが、マイナス部分への働き掛けや管理が上手く出来ていないと従業員から不満が出て、施策の効果は限定的となり定着出来ない要因の一つになっているのではないでしょうか。施策の中で比較的マイナス効果の少ないものとして『①会議運営方法見直し・②ペーパーワーク削減・③翌日の出勤時間を遅らせる』等があげられています。③はインターバル制度と言い、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を設けることで、従業員の生活や睡眠の時間を確保するものです。必ず一定の休息時間を取れるこの考え方は、健康確保、生産性の向上、残業時間の削減などで近年関心が高まっています。一例は図のような働き方です。翌日の始業時間を確保するためにある時刻以降の残業を禁止、または次の始業時間を遅らせることにより「休息期間」を確保すると共に従業員の労働時間の意識向上にもつなげようとするものです。各社の運用に応じたインターバル時間を設定することで、無理なく導入できる施策ではないでしょうか。制度導入をご検討される場合は、インターバル時間の設定や始業時間を遅らせた場合の労働時間の取り扱いなど、規程への落とし込みが必要です。厚労省のホームページなどで詳細をご確認下さい。生産性向上と健康管理、労使共に納得できる施策が運用定着のポイントです。対話を大切にして信頼関係を作り、従業員が安心できる会社創りを目指してください。

月60時間超の割増賃金猶予廃止

2023年1月: 中小企業・60時間超の時間外割増率50%の適用

経営者および人事責任者の皆さん、あけましておめでとうございます。2023年が始まりました。今年はどんな年になるのでしょうか? 既に労働基準法に於いては、インパクトのある法改正が決まっています。それは、202341日から中小企業が猶予中の月60時間超の時間外労働の割増賃金率を50%以上とする法の適用です。また、建設業の時間外労働の上限規制も202441日から撤廃されます。そういう意味では、2023年は労働時間管理が会社経営の明暗を分ける年になるのかも知れません。法改正に伴い各社に於いては、事前の準備が必要かと思います。考えられることとして、①賃金規程、②勤怠管理システム、③代替休暇制度の導入検討、④業務の効率化などです。①は割増賃金率の追加です。計算式を記載してある規定が多いかと思いますので、50%以上の率を適用する要件と計算方法を追加します。②は勤怠の集計方法です。特にシステム化されている場合は時間外労働の60時間超えを抽出できる仕組みか否かがポイントとなります。担当者による手作業の集計、抽出、計算となると、抜けや誤りが発生します。特に日常的には60時間超の時間外が少ないと想定されますので、いざという時に忘れてしまい集計漏れにつながります。自動集計出来る仕組みが有ると安心ですね。③の代替休暇制度とは、50%以上の割増賃金の支払いの代わりに有給休暇を与える制度を言います。会社は代替休暇制度の使用で支払う残業代を削減でき労働者は健康のメリットがあります。労使協定を締結、時間数分の代替休暇を労使協定の定めに従って1日または半日単位で与えることになります。少し管理が大変になりますが、導入をご検討される会社は厚労省のホームページ等で詳細をご確認下さい。なお最後の④業務の効率化は、次回のテーマ『時間外労働の削減への取組方法』と題して紹介させて頂きます。この様に2023年も新たな労使の信頼関係を創って行く1年になりそうです。信頼関係の建設は一生、でも破壊は一瞬です。今年も日々が安心できる会社創りとの気概で会社運営して下さい。2023年が皆様方の会社にとって希望の1年であることを心からご祈念申しあげます。

労働基準法の有給休暇

2022年12月: 条件付の有給休暇付与は有効か?

今月のテーマは『条件付の有給休暇付与』です。実はある労働者(Aさん)から有給休暇について相談がありました。その内容は『12月末で会社を退職予定。給与明細に有給休暇の残数が25日と表示されていた。有給休暇を全て消化後に退職することを考え、逆算して最終出勤日を決め12月末退職にて退職届を提出した。すると会社は、退職するのであれば使える有給休暇は11日、退職しないのならば25日使える。との回答であった。給与明細に表示してある有給休暇の残数が誤っているわけではなく、“退職するのならば使えない”との理由に納得がいかない。労働基準法の違反では無いか?』との事でした。私もAさんのお話しから会社の対応は法違反が懸念されると感じました。念のためAさんに入社日と直近1年間の有給休暇使用状況を確認。Aさんは入社約2年、直近1年では10日の有給休暇を使用していました。図表のように労働基準法の有給休暇の付与は入社6ケ月後に10日、1年6ケ月後に11日です。労働基準法上の有給休暇を計算すると、法の有効期限は2年なので最大21日が付与されます。既に10日を使用しているので法律上の有給休暇残数は11日となり、会社が消化として認める有給休暇残数11日と一致します。そうすると給与明細の25日との差、14日は労働基準法上の有給休暇では無く、法の制限を受けないことになります。会社が独自に設定した病気や慶弔など使用目的を定めた有給休暇では無いかと推定されます。Aさんに説明し就業規則類の確認をアドバイス致しました。このように労働基準法を上回る有給休暇は法の制限を受けませんので、良く言われる“有給休暇の買い取りは法違反”も該当しません。会社と労働者の約束事、労働契約(就業規則など)の取り決めによります。会社は労働者からの疑問に結論だけを伝えるのでは無く、相手の立場にたった丁寧なプロセスの説明が大切です。それが労使の信頼関係構築につながり無意味な労務問題の発生を予防します。日常の何気ない疑問への対応の積み重ねが、やがては揺るぎない信頼関係を構築するのでないでしょうか。日々が安心できる会社創りであるとの気概で会社運営して頂ければ幸いです。

出生時育児休業給付金

20022年11月: 改正育児介護休業法(出生時育児休業給付金)②

今月のテーマは前月の続き『改正育児介護休業法(出生時育児休業給付金)』です。男女とも仕事と育児を両立できるように産後パパ育休制度(出生時育児休業制度、図参照)が、2022101日にスタートしました。出生時育児休業を取得した場合、会社にはその間の賃金を支払う義務が法的にはありません。多くの会社では無給になることが想定されます。そこで法の実効性を担保するため、雇用保険では休業期間中の生活を保障、給付金を設け従業員の生活と雇用の安定を図っていきます。出生時育児休業給付金制度は「育児休業給付金」と共通する部分が多くなっています。育児休業給付金の内容を確認すると理解しやすいかと思います。給付金の留意点として、出生時育児休業に引き続いて育児休業を取得した場合には育児休業給付金に影響があることです。育児休業給付金はもともと休業開始後180日までは賃金日額の67%、181日目以降は賃金日額の50%支給に変更となります。育児休業給付金が賃金日額の67%支給される期間である180日は、出生時育児休業給付金を受給した日数も通算されるところがポイントです。例えば、出生時育児休業を20日間取得した後、引き続いて育児休業を取得した場合、賃金日額の67%の育児休業給付金が支給されるのは、180日から20日を差し引き残り160日間になります。ここは知識として注意が必要な点で、従業員への説明漏れが無いようにして下さい。概念図の中に受給要件・給付金額の計算式・申請期限などの概要は記載致しました。従業員とのトラブルは、会社の規程上は出生時育児休業が取得出来、実際に取得するものの雇用保険の給付金対象要件を満たさず、給付金が受給できないことで起こります。詳細は厚労省のリーフレットなどでご確認の上、事前に貴社従業員が対象となるか否かを正確に確認して、出生時育児休業の取得可否の判断をして下さい。行政が進める子育てと仕事の両立支援の方向性は明確です。この価値観に取り残されると会社経営の持続的発展に影響が出ると推定されます。労使信頼関係構築のチャンスと捉え、法の理解に留まらず制度の導入、運用、定着へとつなげて行きたいものです。安心できる会社創りに一歩前進して下さい。

出生時育児休業制度

20022年10月: 出生時育児休業の施行 ①

今月のテーマは『改正育児介護休業法(出生時育児休業)の施行』です。男女とも仕事と育児を両立できるように産後パパ育休制度(出生時育児休業制度、図参照)が、2022101日にスタートしました。本制度は男性従業員の育児休業取得へのハードルを下げ、仕事と育児の両立を支援するものです。本制度は男性が子の出生後8週間以内に、計2回(分割可能)最大4週間まで休業することができます。女性が産後8週間を休むのは、母体回復に専念するための期間で労働基準法にて就業を原則禁止しており、本制度との目的は異なります。出生時育児休業を取得は原則、全ての従業員とされています。例外として①有期雇用の従業員、②労使協定で除外された従業員があります。例外の有期雇用従業員は、子の出生日(出産予定日前に出生した場合は出産予定日)から起算、8週間を経過する日の翌日から6ヵ月を経過する日までに雇用が終了することが明らかな者は除かれます。例外の労使協定にて除外出来る者は、入社後1年未満・出生時育児休業の申出日から8週間以内に雇用終了・1週間の所定労働日数が2日以下の方に限られます。休業申請できる「対象期間」は、原則「子の出生日から8週間以内」ですが、実際の出生日が予定日と異なる場合は、①出産予定日に出生:出生日から出産予定日の8週間後まで、②出産予定日に出生:出産予定日から出生日の8週間後までとなります。また、休業期間中に一部就業を認めている点が本制度の大きな特徴です。働く日数と時間の上限などが定められておりますが、休業開始予定日の前日まで一定の要件(労使協定など)を満たす場合に可能です。休業期間中に「明日、出勤して下さい」など、出社命令することは不可で従業員の同意は必須になります。私はこの同意の本質を日常の労使信頼関係構築、安心できる職場創りにあると思っています。本制度が経営の基本となる安心創り、信頼関係構築の大切さへの気づきになれば幸いです。なお、本制度を利用した人に給付される『出生時育児休業給付金』の申請も始まります。次回(11月)は出生時育児休業給付金について説明します。

退職の種類

20022年9月: 労務問題と 退職 を考える

今月のテーマは『 労務問題と 退職 を考える 』 です。 まずは 退職 の定義 から考えましょう 。 広辞苑では 単純に 『 勤めている会社などをやめること 』と記載 されていますが、 広義には 労働関係が解消される場合のすべてを指 します。 労働基準法の就業規則記載事項の〈退職に関する事項〉にいう退職 も この意味です 。 労働関係が 終了する々なケースを図で示しました。 経営者の皆様方にはこの図から退職について考えて欲しいと思います。問題のある社員をやめさせたいと考えた時、解雇出来ないか?と直ぐに 聞いてくる経営者がいますが、 労務問題へつながるの は 解雇です。つまり 問題ある社員を辞めさせる経営判断は正し くても 、退職の選択肢を誤るが故に労務問題が発生しているのです。 一番多いい退職は労働者が退職届 のエビデンスにて 、会社が了解する労使合意による労働関係終了の退職です。この合意退職は労務問題が起きません。従って、 逆に 会社も辞めて欲しい労働者がいる場 合は、解雇では無く労使合意 に よる労働関係終了の退職を目指したいのです。会社から労働者へ退職を働き掛けることを退職勧奨と言います が、 会社の働き掛けは出来ても最終的 な決定は労働者 の権利 であること に は注意が必要です。 そして、この退職勧奨のゴールエビデンスは『退職合意書』の締結になります。 労使が自由な意思で退職に合意した内容を客観的に証明出来ることがリスク管理として必要です。一般的には次の項目を網羅したものとなります。 ①退職日、②業務引き継ぎの 約束 、③有給 取り扱い 、④最終給与の計算と支給日、⑤離職理由(会社都合)、 ⑥第三者への開示禁止、⑦非難中傷の禁止、⑧清算条項、 ⑨係争の非請求 、⑩退職への特別な条件 などです。 問題社員に対して円満退職で解決するためのベースは 、 会社が日ごろから コンプライアンスの推進、 正しい労務管理 にて 信頼関係を構築して置くこと です 。問題のある会社が問題ある社員 へ 問題を指摘しても 説得力が無く 『退職合意書』 の取り付けは難しいでしょう。 信頼関係構築とは安心できる職場創りであり、 安心できる 経営 創りでもあります。経営 の基本 となる安心創り 、 信頼関係構築 について 考えて頂ければ幸いです。

労働法と労働相談の関係

2022年8月: 労働相談(労働法との関係:行政のかかわり方)

今月のテーマは『労働相談(労働法との関係:行政のかかわり方)』です。私は、狭山市産業労働センターや行政が行う労働総合相談コーナーにて労働相談を行っており、労働に関する様々な問題やお悩みをお聞きする機会を持っています。そこでの相談者に共通していることは、“労働問題は労働基準監督署が解決”に向けて動いてもらえると認識していることです。労働法とは労働に関する法律の総称であり、その中身は労働基準法を始め様々な法が存在します。それを法の性格上で大きく分けると『公法』と『私法』の区分になります。公法は「国家と私人(会社)との法律関係」、私法は「私人(会社)と私人(社員)との法律関係」を規律するものです。概念図にて3者(行政・会社・社員)と法の関係性を簡易的に表現してみました。これを公法の労働基準法(以下、労基法と言う)中心に説明します。会社と社員では労働契約(契約書、就業規則など)が締結されます。契約は当事者間の合意にて原則自由ですが、民法、労働契約法(私法)などのルールに沿って締結されます。しかし、労働契約は一般的に会社側が強い位置づけのため、労働者に不利な契約になりがちです。そこで、公法の労基法にて最低限の労働条件を法で定め、法を下回る契約はその部分を無効とします。また法の実効性は罰則を持って担保します。従って、相談内容が労基法を下回らない労働契約違反があっても労基法(労働基準監督署)による取り締まりは原則出来ません。労基法を下回らない労働契約違反の相談は、話し合いでの解決を目指すことになります。その解決機関の代表例が裁判ですが、行政も紛争解決を支援する仕組み(助言・指導・あっせんなど)を整えています。話し合いの解決では、どこまでなら歩み寄れるか?の信頼関係がポイントとなります。裁判になると多くの労力と金銭的負担など会社経営へのインパクトは決して小さくありません。日々のコミュニケーションや問題への迅速な対応が信頼関係構築につながり、いざという時にそれが顕在化して会社を守ります。信頼関係構築とは安心できる職場創りであり、経営の基本であることをあらためて考えて頂ければ幸いです。

就業規則のポイント

2022年7月 :就業規則とは

 今月のテーマは『労働時間とは』です。働き方改革やコロナによるテレワークなどが進み労働時間と私的時間の境界がグレーとなり労働時価に関するお問い合わせが増えています。では少し考えて見ましょう。これって労働時間でしょうか?朝のラジオ体操・教育・接待ゴルフ・お客様との懇親会・改善活動・・・。お問い合わせの多くはこの様な具体的な項目をあげてきます。私の第一義的な回答は、『どちらにも該当する場合があります』となります。つまり、項目で労働時間か否かを判断するものでは無く、案件毎に判断して行く必要があるからです。裁判による労働時間とは、『会社の指揮命令下にある時間』とされています。実務担当者が、これを判断するのは少し難しいかと思いますので、簡易的な基準を図にまとめて見ました。まず、その出発点は労働契約にあり、所定労働時間の内か外かで原則的な時間の捉え方がわかります。その上で、原則外をどの様に判断するか?が次のステップです。例えば所定労働時間内は原則労働時間ですが、労働から解放され自由な時間(昼休みなど)が与えられていれば例外的にその時間は労働時間にはなりません。逆に所定労働時間外であっても残業(指揮命令下にある時間)などは時間外での労働時間となり、賃金の支払いが必要となるわけです。特に時間外は『指揮命令下にある時間』の判断要素が重要なカギになります。具体的には『業務の関連性・業務遂行上の義務・余儀なくされたか?・黙示の命令の有無?・労働からの解放は?・場所的を含む拘束性は?・社会通念上必要と認められる時間か?・その他特段の事情があったか?など』になります。会社が意図しないサービス残業が知らず知らず発生しているかも知れません。その風土は労使の信頼関係を崩し、生産性悪化や労務問題へつながるリスクとなりますので注意が必要です。では具体的に会社(管理職)のやることは何か?を考えた場合、次のことが考えられます。①時間外は指示命令又は事前申請の承認にて行う。②出退時刻と残業時間の整合性を確認する。③指示なく残っている場合や自主的な時間外を黙認せず、業務をやめて退社するように指示する。④禁句は「予算上に上限があるから○○時間以上はダメ!」など、サービス残業の間接的な強要を禁止する。などです。声掛けのマインドは、労使共に経済的な観点ではなく、安心して働ける職場創りに軸足を置く様に心掛けましょう。

2022年6月 :労働時間とは

 今月のテーマは『労働時間とは』です。働き方改革やコロナによるテレワークなどが進み労働時間と私的時間の境界がグレーとなり労働時価に関するお問い合わせが増えています。では少し考えて見ましょう。これって労働時間でしょうか?朝のラジオ体操・教育・接待ゴルフ・お客様との懇親会・改善活動・・・。お問い合わせの多くはこの様な具体的な項目をあげてきます。私の第一義的な回答は、『どちらにも該当する場合があります』となります。つまり、項目で労働時間か否かを判断するものでは無く、案件毎に判断して行く必要があるからです。裁判による労働時間とは、『会社の指揮命令下にある時間』とされています。実務担当者が、これを判断するのは少し難しいかと思いますので、簡易的な基準を図にまとめて見ました。まず、その出発点は労働契約にあり、所定労働時間の内か外かで原則的な時間の捉え方がわかります。その上で、原則外をどの様に判断するか?が次のステップです。例えば所定労働時間内は原則労働時間ですが、労働から解放され自由な時間(昼休みなど)が与えられていれば例外的にその時間は労働時間にはなりません。逆に所定労働時間外であっても残業(指揮命令下にある時間)などは時間外での労働時間となり、賃金の支払いが必要となるわけです。特に時間外は『指揮命令下にある時間』の判断要素が重要なカギになります。具体的には『業務の関連性・業務遂行上の義務・余儀なくされたか?・黙示の命令の有無?・労働からの解放は?・場所的を含む拘束性は?・社会通念上必要と認められる時間か?・その他特段の事情があったか?など』になります。会社が意図しないサービス残業が知らず知らず発生しているかも知れません。その風土は労使の信頼関係を崩し、生産性悪化や労務問題へつながるリスクとなりますので注意が必要です。では具体的に会社(管理職)のやることは何か?を考えた場合、次のことが考えられます。①時間外は指示命令又は事前申請の承認にて行う。②出退時刻と残業時間の整合性を確認する。③指示なく残っている場合や自主的な時間外を黙認せず、業務をやめて退社するように指示する。④禁句は「予算上に上限があるから○○時間以上はダメ!」など、サービス残業の間接的な強要を禁止する。などです。声掛けのマインドは、労使共に経済的な観点ではなく、安心して働ける職場創りに軸足を置く様に心掛けましょう。

2022年5月 パワーハラスメント②

今月のテーマは前回の続きパワーハラスメントです。R4年4月1日に労働施策総合推進法が改正、すべての企業がパワハラ防止措置義務の対象となりました。前回は本法のパワハラ定義と企業への責務について説明致しました。では具体的に企業のやることは何かを本日は解説します。法が求める企業への責務を解読、企業のやることを4つの視点で区分すると次のようになります。1つ目はパワハラ該当性の理解。そもそもその行為がパワハラにあたるのか否かの入口を押さえることです。そのためには、定義や厚労省の事例を理解する事と必要な指導とパワハラの相違点などマネージメントラインを理解する事が大切です。2つ目は重要な役割を担う相談窓口の準備になります。担当者とその役割を決め、担当者の不安解消も含めたスキル習得、模擬練習や経験による育成となります。その上で3つ目は会社方針や就業規則に落とし込んだルール、だれにどの様に相談すれば良いのかなど社内体制、相談窓口の具体的な内容等を従業員へ周知徹底することになります。ここまでが予防の視点です。4つ目は解決の視点になります。不幸にしてハラスメント案件が発生した場合の適切な対応の出来る準備です。いわゆる危機管理の位置づけです。事実確認~被害者への配慮~行為者への措置~防止策を予めパターン化して準備して置くことで、発生時への冷静でスムーズな対応につながります。もちろんこれだけで全てを網羅できるとは限りませんが、まずは『予防と解決の2軸』を実行する上で最低限必要なものをリスト化致しました。皆様の会社も一度チェックして見てはどうでしょうか? 企業規模に関係なく求めている法律です。自社で対応出来ない事は外部リソースの活用も当面は必要かと思います。短期的には、企業としては新たな工数や費用の発生につながることもありネガティブに受け取られがちです。しかし中長期的には、ハラスメントゼロの職場は従業員の力を最大限に発揮させることになり、将来の業績向上につながります。本法改正対応への成否のカギは、投資としてのポジティブな捉え方が出来るか否かにあるのではないでしょうか。

ハラスメント防止の2軸

2022年4月 パワーハラスメント①

今月のテーマはパワーハラスメントです。R4年4月1日に労働施策総合推進法が改正され、すべての企業がパワハラ防止措置義務の対象となりました。従来は会社(または行為者)と被害者との間で民事的な問題としてのみ取り扱われてきました。本法改正にて行政も会社への助言指導・調停やその結果の勧告などハラスメント防止措置に関わっていくことになりました。パワハラとは、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③その雇用する労働者の就業環境が害されるもの、この3つ全て満たすものが該当すると定義されています。企業への責務は、Ⅰ)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発、Ⅱ)相談(含む苦情)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、Ⅲ)パワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応、Ⅳ)併せて講ずべき措置 ()相談者・行為者等のプライバシー保護に必要な措置と周知、()相談、確認協力、労働局援助制度利用等を理由とした不利益取扱いされない定めと周知・啓発 となっています。図は企業にとってハラスメント防止措置を予防と解決の視点で必要な事項を抜粋、区分したものです。まずは『予防と解決の2軸』を実効性のある体制作りからスタートして見てはどうでしょうか? ハラスメントゼロの職場で従業員の力を最大限に発揮させ、業績向上につなげましょう。

★ 2022年1月29日(土)共同組合さいたま総合研究所(中小企業庁公認の経営コンサルティングファーム)が開催するコンサルアカデミーでのプレゼンを行いました。受講者は本経営コンサルティングファームに加入している中小企業診断士の先生など経営コンサルのプロ集団の方々です。少子高齢化にて急速に進む労働力人口の減少に対する施策をリスク管理の視点では無く、生産性/創造性の経営視点にて企業へのコンサルティング提案するテーマにてお話しをさせて頂きました。質疑応答では、現場の深刻な人財の確保と定着の問題があることをお聞きしました。多様な価値観がある中、どのような職場環境を目指すのか? パワハラ防止法も4月から全企業が対象となります。不機嫌な職場を改善して全人財の人財力最大化を目指す会社、いわゆる『個が輝く会社』を目指す方向性の中にその回答があると思います。

★ 2021年11月24日(水)顧問先へ労働局・均等室の指導員が来社されました。目的は同一労働同一賃金の法対応への推進状況を確認するものでした。私も立ち合いをさせて頂き、指導員との意見交換のもと、私の考え方、法の解釈など間違いのないことを再確認することが出来ました。そして、顧問先へ導入した対応策とその実施状況を説明、法の主旨に合致した推進が出来ていることに、称賛のお言葉を頂きましたことが大変嬉しかったです。

 今年の4月から中小企業へ適用された同一労働同一賃金の法律ですが、法の解釈が難しく、”同一労働同一賃金”という言葉のイメージが先行して適切な行動が出来ていない企業が多いいようです。労働局では、現在、積極的に各企業へ訪問し推進状況の確認を行っているとのことでした。
 私としては、行政がどのような視点で同一労働同一賃金の推進状況を確認されるのかを理解出来たことも大きな収穫でした。この経験を顧問先企業様をはじめ、これから出会う多くの企業様の支援に役立てて行きたいと思います。

★ 2021年7月16日(金)ある工業団地で組織された工業会の夏季セミナーに、「社労士と考えるダイバーシティ」をテーマにワークショップ形式のセミナー講師を行いました。
 
中堅企業約30社、役員と人事責任者が参加されたセミナーでしたので、大変緊張致しました。 発表の内容もハイレベル! さすがです。参加者からは、面白い事例紹介で新しい気づきがあったなど、大変好評でほっとしました。事務局の方からは、また継続してやってほしい、との大変嬉しいお話も有り、充実感のあるセミナー講師の時間となりました。

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新着情報・お知らせ

2023/9/11
ブログの更新 人事権行使と労務トラブル
2022/8/15
ブログの更新 労働相談
2022/6/15
゛ハラスメント対策支援サービスを開始しました。ブログの更新。
2022/4/11
事務所紹介 パートナースタッフを更新しました。
2021/7/31
小さな会社のスタートアップ人事制度の導入支援サービスを開始しました。
2021/5/11
労務監査サービスを開始しました。
2021/5/5
事務所のフィロソフィーを掲載しました
2021/3/18
同一労働同一賃金コンサルティング・簡易パックのサービス開始しました
2021/1/4
ホームページを公開しました
2021/1/4
「事務所概要」ページを作成しました

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